顕微鏡 第45巻▶第4号 2010
■特集:微生物をめぐる最近の知見

臨床由来マクロライド耐性ブドウ球菌の顕微科学的解析

兵行義,山田作夫b,c,原田保

川崎医科大学耳鼻咽喉科
川崎医科大学微生物学
川崎医療福祉大臨床栄養学科

要旨:14員環マクロライド系抗菌薬(マクロライド)は臨床的に広く用いられる抗菌薬であるが,近年,抗療療法以外の少量長期療法にも頻用されていることから,マクロライド耐性菌の増加が危惧されている.我々は,慢性副鼻腔炎の患者から分離したマクロライド耐性Staphylococcus capitisおよび臨床由来マクロライド耐性表皮ブドウ球菌を対象に超微形態的に観察したところ,これらの耐性株が細胞壁肥厚という特徴を有していることを見出すことができた.さらに,マクロライド耐性S. capitisは従来報告されている4種のマクロライド耐性遺伝子のいずれをも保有せず,またマクロライド耐性表皮ブドウ球菌においても,4種のいずれの耐性遺伝子を保有しても同程度の細胞壁肥厚という形態的特徴を呈することが判明し,細胞壁肥厚に関連する新たなマクロライド耐性メカニズムの存在することが示唆された.

キーワード:マクロライド,ブドウ球菌,超微形態,抗菌薬耐性

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