顕微鏡 第46巻▶第2号 2011
■がん幹細胞の動態とその制御

がん幹細胞の血管ニッチと血管新生

高倉伸幸

大阪大学微生物病研究所・情報伝達分野

要旨:血管は酸素,養分,そして免疫細胞の供給という基本的な機能以外にも,近年組織形成や組織の維持機構にも関わることが判明してきた.すなわち,種々の組織において,組織の幹細胞の自己複製や未分化性を維持する生態学的適所,いわゆるニッチを血管が提供するという概念である.正常組織に限らず,がん組織においてもがん幹細胞のニッチは血管であることが判明してきている.すなわち,血管形成や血管の維持における分子機序の解明は,組織再生やがん治療においての新しい治療概念の創出に重要であると考えられる.近年,血管新生の過程において少なくとも3種類の内皮細胞が機能していることが判明してきている.このことは,血管新生においても,幹細胞システムが機能しているのではないかということが示唆されてきている.

キーワード:血管内皮細胞,血管ニッチ,がん幹細胞

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