知覚終末シュワン細胞のプリン作動性信号系
北海道大学大学院医学研究科組織細胞学分野
要旨:皮膚機械刺激受容器のグリアである終末シュワン細胞は,突起の先が分かれて異なる軸索終末を被う薄板をなす点を特徴とする.私たちは,ラット洞毛の動き受容器槍型終末の分離標本を用いた生理実験で,この細胞が細胞間信号物質ATPの刺激に対し,プリン受容体P2Y2を介してCa応答することを見出した.ここでは,私たちの最近の共焦点画像解析に基づき,(1)終末シュワン細胞の各薄板突起が局所機械刺激で遊離するATPを自身の受容体で検知し突起の長さに限局したCa信号を生成し得ること,(2)内因性細胞外ATP分解酵素が細胞内信号伝播範囲を制限していること,(3)Ca信号系分子群のシュワン薄板へのカベオラ依存的な局在がプリン作動性信号の細胞内区域化に欠かせないこと,を示したい.区域化された信号が惹き起こすシュワン細胞の活動が,生体内の器官で伴行軸索機械受容器に及ぼし得る効果について考察する.
キーワード:機械刺激受容器,槍型終末,ATP,グリア,共焦点顕微鏡