顕微鏡 第46巻▶第4号 2011
■解説

高分解能電子顕微鏡の進展と今後

高井義造

大阪大学・大学院工学研究科・生命先端工学専攻 物質生命工学コース

要旨:高分解能電子顕微鏡法は収差補正電子光学系の開発により今新しい時代を迎えている.多くの研究者の50年以上にわたるたゆまない努力のお陰で,原子コラム単位の不純物の分析等が可能になり,グラフェンのような単原子層厚さの試料に対しては,構成原子だけでなくボロンや窒素や酸素といった軽元素からなる不純物原子や格子欠陥の単一原子レベルの観察,ならびに原子サイト毎の結合状態の分析も可能になってきた.高分解能電子顕微鏡は今や様々な分野においてナノテクノロジーを推進するためになくてはならない装置となっている.この解説では,これまでの電子顕微鏡の収差補正技術と位相板技術といった装置開発の進展を振り返りながら,今後の高分解能電子顕微鏡の装置化研究ならびに応用研究の向かう方向について議論する.

キーワード:高分解能電子顕微鏡,球面収差補正,色収差補正,位相板

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