顕微鏡 第47巻▶第3号 2012
■特集:TEMをもちいた電池のイメージング

電子線ホログラフィーによる全固体リチウム電池反応のその場観察
―電子線ホログラフィーの新たな材料分野への挑戦―

山本和生

一般財団法人ファインセラミックスセンター ナノ構造研究所

要旨:全固体リチウム電池は,正負両電極間にリチウムイオン伝導固体電解質を用いた電池であり,現在一般的に用いられている有機電解液を用いた電池に比べて,高い安全性,高エネルギー密度,低コスト,長寿命といった特長を持つ.しかし,固体/固体の界面をリチウムイオンが移動しなければならず,そこでの界面抵抗が実用化を阻んでいるのが現状である.一方,電子線ホログラフィーは,半導体材料や磁性材料等の電場,磁場を定量的に観察できる電子顕微鏡法として応用展開されてきた.今回我々は,TEM内で全固体電池を充放電させる技術を開発し,電子線ホログラフィーを用いて固体電極/固体電解質界面近傍の電位分布をその場観察することに世界で初めて成功した.正極側と負極側の電位の配分過程や,電気二重層が形成される界面近傍の電位分布,固体電解質内部での電位の変化等から,リチウムイオンの伝導がどこで阻害されているのかを視覚化できるようになった.

キーワード:全固体リチウム電池,その場観察,電子線ホログラフィー

本文PDF