顕微鏡 第47巻▶第3号 2012
■解説

大脳皮質介在ニューロン移動と成熟のライブイメージング

村上富士夫

大阪大学大学院生命機能研究科脳神経工学講座

要旨:大脳皮質はヒトの様々な高次機能の担い手である.大脳皮質は興奮性投射ニューロンと抑制性介在ニューロンから成るが,後者の占める割合は2割程度と低いものの極めて多様性に富んでおり,高次機能発現における役割の認識が高まっている.したがって,大脳皮質の成り立ちの理解にとって如何にして抑制性介在ニューロンが大脳皮質に組み込まれていくかを明らかにすることは極めて重要である.我々は抑制性ニューロン特異的に緑色蛍光蛋白(GFP)を発現するマウス及び電気穿孔法で抑制性介在ニューロン特異的に遺伝子を導入することで皮質の抑制性ニューロンを標識し,その動態を追った.大脳基底核隆起で発生した抑制性ニューロンは脳の深部の中間帯・脳室下帯を接線方向に移動して皮質の背側部に辿り着いた後,辺縁帯で長期間に亙り酔歩用の動きを示した.これを乱すと抑制性ニューロンの脳内最終分布が変化することなどから,この動きは抑制性ニューロンが皮質に万遍なく広がるのに重要な役割を果たすものと考えられる.

キーワード:大脳皮質,細胞移動,子宮内電気穿孔,GFP

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