顕微鏡 第47巻▶第3号 2012
■解説

多分割検出による原子分解能STEMの新しい展開

柴田直哉a,b

東京大学大学院工学系研究科総合研究機構
科学技術振興機構 さきがけ研究員

要旨:STEM法は,細く絞った電子プローブを試料上で走査し,各点からの透過散乱電子を試料下部の検出器で検出し像を形成する手法である.その像コントラストは検出器の形状,位置,角度などによって大きく変化し,得られる情報は用いる検出器のジオメトリと密接に関連している.近年,収差補正技術に代表される電子光学系の進展に伴い,STEM法は原子構造解析の主要なツールとなりつつある.しかし,検出器ジオメトリと原子分解能像の関係には未開拓の領域が存在し,更なる原子レベルの情報取得が期待されている.本稿では,最近開発した原子分解能対応多分割検出器の概要を紹介するとともに,多分割検出による原子分解能STEMの新たな可能性ついて議論する.

キーワード:走査透過型電子顕微鏡(STEM),多分割検出器,原子分解能,DPC

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