顕微鏡 第48巻▶第1号 2013
■解説

メラノソームの形成・成熟・輸送の仕組み

石田森衛,大林典彦,谷津彩香,福田光則

東北大学大学院・生命科学研究科・膜輸送機構解析分野

要旨:メラノソームはメラニン色素を合成・貯蔵する細胞内の袋状の構造物(オルガネラと総称)で,メラノサイトと呼ばれる哺乳類の皮膚などに存在する特殊な細胞で形成される.メラノソームはメラニン色素を含み黒く着色されているため,古典的な光学顕微鏡でも観察が可能であり,その研究の始まりは150年以上前に遡る.この長い歴史の中で,メラノソームの単離・精製に関する生化学的な研究が盛んに行われ,また近年のマウスの毛色変異体やヒトの色素異常を伴う遺伝病の原因遺伝子の解析により,メラノソームの機能に関与する分子が数多く同定されてきた.本稿では,これらの研究により解明されたメラノソームの基本的な性質についてまず概説し,メラノソームの形成・成熟・輸送の仕組みについて最近の知見を紹介する.

キーワード:メラノサイト,低分子量Gタンパク質Rab,色素沈着低下,リソソーム関連オルガネラ,膜輸送

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