顕微鏡 第48巻▶第3号 2013
■特集:ナノイオンプローブによる新規顕微計測技術の展開

走査型ヘリウムイオン顕微鏡による先端ナノマテリアル評価技術の開発と共用

大西桂子

物質・材料研究機構 先端的共通技術部門 極限計測ユニット 表面物性計測グループ

要旨:ナノマテリアルの創製に伴い,その表面微細構造をナノスケールでリアルに評価できる新たな顕微鏡法が求められている.走査型ヘリウムイオン顕微鏡(SHIM)は,走査型電子顕微鏡(SEM)と同様な操作性ながら,電子線の代替にヘリウムイオンビームを用いることで,高空間分解能,大焦点深度,明瞭な物質コントラストなどの利点を有する.また,帯電を中和するための電子銃を有し,コーティングなしに絶縁体を観察できる.NIMSでは,その場試料加熱機構を試作し,試料昇温時の高分解能SHIM観察に成功した.一方,ヘリウムイオンビームによるナノスケール直接リソグラフィ加工も可能である.さらに,様々なガスを導入する機構を取り付けることにより,イオンビーム誘起ガス分解堆積を利用して,金属や半導体などのナノスケール構造体の創製が可能になる.本装置は,NIMS微細構造解析プラットフォーム共用装置として,国内外の研究支援に活用されている.

キーワード:共用装置,イオン顕微鏡,高空間分解能,絶縁体計測,微細加工

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