顕微鏡 第48巻▶第3号 2013
特集:ナノイオンプローブによる新規顕微計測技術の展開

走査型イオン伝導顕微鏡のバイオサイエンスへの応用

中島真人,牛木辰男

新潟大学大学院医歯学総合研究科 顕微解剖学分野

要旨:走査型イオン伝導顕微鏡(SICM)は,1989年にHansmaらが紹介した顕微鏡で,内部を電解質で満たしたマイクロガラスピペット電極を探針として,液中に留置した対照電極との間に生じたイオン電流を信号として用いている.このイオン電流は,マイクロガラスピペット電極の先端が試料に近接して遮蔽されることで減少するため,この現象を利用しながらマイクロガラスピペット電極を走査して,試料表面の立体形状を画像化することができる.SICMは柔らかい生物試料を液中で立体観察する道具として期待されていることから,本稿では,その原理を簡単に解説し,筆者らのバイオサイエンスへの応用例の一端を紹介した.まず,SICMによるコラーゲン細線維の液中観察像を示し,次に,化学固定した培養細胞と,生きた細胞の形状変化観察への応用を示した.さらに気管線毛上皮などの組織観察への応用を示した.また,走査型電子顕微鏡の像と比較し,SICMの特徴と今後のバイオサイエンスへの応用の可能性について論じた.

キーワード:走査型イオン伝導顕微鏡,走査型プローブ顕微鏡,ホッピングモード,コラーゲン細線維,培養細胞

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