顕微鏡 第48巻▶第3号 2013
■解説

単一ニューロンの形態解析を基盤とした神経回路構造の研究

古田貴寛

京都大学大学院医学研究科高次脳形態学教室

要旨:我々は,単一ニューロンの形態学的所見を積み上げることと,回路構造とニューロンの活動特性の関係性を調べる研究を行っている.ここで,この戦略に則した実験の三つの例を示す.1つ目は,組替ウイルスによる,皮質―脊髄投射ニューロンの軸索の標識である.単一ニューロン由来の軸索が,高い頻度で様々な皮質下領域に側枝を送るのが分かった.二つ目は,免疫染色を施したサンプルを,集束イオンビームを装備した走査型電子顕微鏡での観察に適用する実験である.超微細形態における免疫反応が三次元的に観察できた.三つ目は,ラットヒゲ感覚システムにおいて,juxtacellular labeling法を用いた実験である.視床ニューロンの受容野の大きさと,それらのニューロンが大脳皮質に送る軸索の皮質内分布との関係を明らかにした.こうしたボトムアップ的実験が,神経回路のしくみを説明する理論的モデルの構築に役立つと期待している.

キーワード:神経回路,単一ニューロンの形態と活動特性,Sindbisウイルス,juxtacellular labeling

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