顕微鏡 第49巻▶第1号 2014
■大気圧走査電子顕微鏡(ASEM)

大気に開放された試料室を持つ大気圧走査電子顕微鏡の開発

西山英利,小泉充,小川康司,北村真一,小入羽祐治,須賀三雄,佐藤主税

日本電子(株)
日本電子テクニクス(株)
産業技術総合研究所バイオメディカル研究部門

要旨:大気圧走査電子顕微鏡(ASEM)と光学顕微鏡を搭載した装置について,改良・追加された機能を述べる.試料は,大気に開放された薄膜ディッシュ上におかれる.ディッシュ底には電子線を透過可能な薄膜があり,その上に置く試料は液体に浸された状態でも良い.薄膜ディッシュは,倒立型SEM鏡筒の先端に設置され,鏡筒内を真空に保つシールの役割も果たす.また,薄膜ディッシュの上方には光顕を搭載しており,上から光顕像,下から薄膜を通して電子線を試料に照射しSEM像の取得ができる.改良・追加された機能は,モーターステージ,万が一の薄膜破壊に備えた鏡筒汚染保護機構,装置を制御するグラフィカルユーザーインターフェイスである.本装置は,ASEM観察しながらの試薬の投与を可能にし,体積変化のある現象にも対応できる.このような利点により,液中のシリカ粒子のランダムな運動を観察しながら,食塩水を滴下した際の反応を観察できた.

キーワード:電子顕微鏡,環境セル,ランダム運動,大気,ASEM

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