顕微鏡 第49巻▶第1号 2014
■解説

電子顕微鏡法を用いたメソ構造物質の三次元構造解析

阪本康弘

大阪府立大学ナノ科学材料研究センター

要旨:メソ構造物質は通常の物質と比べて一桁から二桁大きなメソスケールの空間的特徴(数nmから数百nm)をもつ系であり,そのひとつにシリカメソ多孔体がある.シリカメソ多孔体は,メソスケールでは周期性をもつが原子スケールではアモルファスという構造上の特異性のため,その構造解析にあたり透過電子顕微鏡(TEM)法が必要不可欠である.特に電子線結晶学を用いることによりTEM像から結晶構造因子の位相と振幅を実験的に抽出し,初期モデルを仮定すること無くシリカメソ多孔体の三次元構造を決定できる.また,電子線トモグラフィはメソ多孔性シリカナノ粒子中の細孔構造など周期配列していない三次元構造を決めることができる.本解説では,電子線結晶学および電子線トモグラフィを用いたシリカメソ多孔体の三次元構造解析について紹介する.二元系ナノコロイド結晶の電子顕微鏡法による構造解析についても触れる.

キーワード:メソ構造物質,シリカメソ多孔体,電子顕微鏡法,電子線結晶学,電子線トモグラフィ

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