顕微鏡 第49巻▶第2号 2014
■特集:環境電顕の進歩と応用

水素吸蔵反応のTEMその場観察

松田潤子,吉田健太b,c

九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所
名古屋大学高等研究院
ファインセラミックスセンターナノ構造研究所

要旨:地球温暖化や化石燃料枯渇が問題となる中で,電気と相互変換可能なト水素をコンパクかつ安全に貯蔵・輸送することのできる水素貯蔵材料の開発が重要となっている.水素貯蔵材料の水素吸蔵能,繰り返し特性,反応速度などの特性は水素吸蔵・放出過程における微構造と関係する.本研究では水素吸蔵・放出過程における水素貯蔵材料の構造を明らかにすることを目的とし,リトラクタブル方式の環境セル(ex situセル)付TEM試料ホルダを作製した.これにより水素ガスに曝したパラジウム粉末を大気中に取り出さずにそのままTEM観察したところ,結晶粒の粗大化が観察された.次にオープン方式の環境制御型TEMによりMg-Ni膜の水素雰囲気中でのその場観察を行い,Mg-Ni膜の水素化初期過程の格子像をとらえることに成功した.その結果,Mg2NiH4の生成の後,MgH2が結晶化することを明らかにした.

キーワード:水素吸蔵反応,ex situセル,その場観察,環境制御型TEM,高分解能TEM

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