顕微鏡 第49巻▶第3号 2014
■解説

長周期積層構造を持つマグネシウム基金属間化合物の結晶構造

岸田恭輔,乾晴行

京都大学大学院工学研究科材料工学専攻
京都大学構造材料元素戦略研究拠点

要旨:次世代の軽量構造用合金として長周期積層(LPSO)構造を有する微細な析出物相(Mg-LPSO相)を含むMg-遷移金属元素(TM)-希土類元素(RE)三元系を基礎とする合金が注目されている.このような微細な析出物の構造解析には走査透過電子顕微鏡法(STEM)による原子尺度での直接観察ならびに透過電子顕微鏡法(TEM)の電子回折を用いた構造解析が有効である.本稿ではMg-Al-Gd三元系合金中に新たに発見されたMg-LPSO相を中心にSTEM/TEMにより解明した結晶構造について紹介する.特にMg-Al-Gd系LPSO相は,完全な規則配列構造を有する構造ブロックの積層により形成されているが,その構造ブロックの積層には長周期の積層規則が無いという一次元不規則構造をとる.このような特殊な積層構造を持つMg-LPSO相の結晶構造をOrder-disorder(OD)構造という結晶学的概念に基づいて解析した例について解説する.

キーワード:マグネシウム合金,走査透過電子顕微鏡法,結晶構造,Order-disorder構造

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