顕微鏡 第49巻▶第3号 2014
■講座

光の回折限界を超える蛍光顕微鏡法PALMによる細胞内微小構造の観察

Susana Rocha,Herlinde De Keersmaecker,阿部充宏,雲林院宏,Johan Hofkens,小林俊秀,宮脇敦史,水野秀昭a,c

Department of Chemistry, KU Leuven
理化学研究所基幹研究所
理化学研究所脳科学総合研究センター

要旨:蛍光顕微鏡は標的分子を特異的に標識,観察できる手法として生命科学の分野で広く利用されている.蛍光タンパク質発現による標識技術の開発によって生細胞での非侵襲的な標識が容易となり,ライブセルイメージングへ応用されている.近年,超高解像度顕微鏡と総称される光の回折限界を超えた蛍光顕微鏡法が開発された.本稿ではそのひとつ,photoactivated localization microscopy(PALM)について概説する.PALMは光スイッチング蛍光タンパク質で標的分子を標識し,その確率的なスイッチングを利用して空間的に近接する分子を時間的に分離して観察,座標情報を曲線回帰により求める.PALMは蛍光タンパク質標識・発現した標的分子を数十nmの解像度で観察できる.また,著者等の開発したプローブを用いて脂質ラフトが染色・観察できる.さらに,生細胞へ応用し,分子動態の解析も可能である.

キーワード:超高解像度顕微鏡,PALM,光スイッチング蛍光タンパク質,脂質ラフト,分子トラッキング

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