顕微鏡 第50巻▶第1号 2015
■解説

SiC上エピタキシャルグラフェンの成長と優位性

楠美智子,乗松航

名古屋大学エコトピア科学研究所,名古屋大学大学院工学研究科化学・生物工学専攻

要旨:グラフェンは理想的な2次元原子膜であり,その優れた電気特性から,特に高速電子デバイスなどエレクトロニクス応用に向けた研究が精力的に行われてきた.本稿では,グラフェンの合成法の一つであるSiC表面熱分解法に焦点を絞り,主に透過電子顕微鏡を用いて調べたエピタキシャル・グラフェンの成長機構,基板との界面構造,積層構造について解説する.特にSiCの極性や表面ステップ構造がグラフェン特性に及ぼす多彩性,優位性を紹介するとともに,近年の移動度を中心とした特異な電気特性,結晶異方性,ナノリボン化,ねじれ積層構造等についての話題をレビューし,今後の可能性を述べる.

キーワード:SiC表面熱分解,エピタキシャル成長,高移動度,炭化物,バッファー層

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