顕微鏡 第50巻▶第1号 2015
■解説

嗅球神経回路の調節に関する三次元構造解析

樋田一徳,清蔭恵美,鈴木良典,浜本真一

川崎医科大学解剖学

要旨:脳の基本的神経回路のモデルとして注目される嗅覚系の一次中枢の嗅球は,これまで介在ニューロンを中心としたニューロン構成の解析から始まったが,最近の新たな細胞標識法や顕微鏡技術の発展などにより,従来同定できなかったニューロン,特に他の脳領域からの長距離にわたる遠心性投射系ニューロンの単一標識が可能となってきた.これらのニューロンによる神経回路調節の構造的基盤は従来推測の域を出ていなかったが,遺伝子改変動物,ウイルスベクターを用いた遺伝子導入,多重免疫染色,レーザー顕微鏡と電子顕微鏡を直接組み合わせた統合解析,デジタル単一ニューロントレース,電子線トモグラフィーを駆使することで,嗅球神経回路への遠心性調節ニューロンの存在意義が分かり始めた.本稿では最近の筆者らのセロトニンニューロンについての所見を紹介し,神経回路への調節系の三次元構造解析の有用性と意義,そして今後の発展の可能性を論じたい.

キーワード:嗅球,神経回路,調節,セロトニン,ニューロン標識

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