顕微鏡 第50巻▶第2号 2015
■特集:単一菌体の時間的・空間的連続観察から得られた新知見と将来展望

酵母サッカロミセスのストラクトーム解析

山口正視

千葉大学・真菌医学研究センター

要旨:1932年に電子顕微鏡が発明されて以来,半世紀以上にわたって,細胞構造は,定性的,二次元的にのみ観察されており,定量的,三次元的解析はほとんどなされてこなかった.ストラクトームは,「電子顕微鏡レベルにおける細胞の定量的,三次元的全構造情報」と定義され,ゲノム,プロテオームと並ぶ,重要な概念である.本稿では,酵母サッカロミセス・セレビシエを急速凍結・凍結置換法および連続超薄切片法を用いて,初めて,ストラクトーム解析を行った結果を解説し,その特徴を明らかにする.また,ストラクトーム解析を応用したことによって未知の微生物の発見に至った経緯を紹介する.さらに,近年盛んに行われている連続スライスSEM法との違いについて考察する.

キーワード:細胞構造,凍結置換法,連続超薄切片法,定量的,三次元再構築

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