顕微鏡 第50巻▶第3号 2015
■日本における超高速電子顕微鏡開発の現状

スピン偏極パルスTEMにおける超高速時間分解能とそのビーム品質

桑原真人a,b,宇治原徹a,b,浅野秀文,齋藤晃a,b,田中信夫a,b

名古屋大学未来材料・システム研究所
名古屋大学大学院工学研究科

要旨:スピン偏極パルス透過電子顕微鏡は,半導体フォトカソードを用いたレーザー駆動型電子顕微鏡である.そのカソード量子効率は0.1%台と高いことから,連続的(CW)な電子線発生からピコ秒パルス電子発生までのダイナミックレンジを持つ希有な透過電子顕微鏡である.これまでにCWモードにおいて,3.1 × 108 A/cm2・sr@200 keVの高い輝度,エネルギー幅114 meVの単色性,そして可干渉距離150 nm以上(平行度(1.76 ± 0.3) × 10–5 rad)の干渉性を有することを実証した.これまでに,パルス電子線発生やポンププローブ実験のためのレーザー光学系を確立し,マイクロ秒からピコ秒パルス電子線発生の確認,時間分解TEM像の取得を実現した.さらにピコ秒パルス電子線を用いた干渉実験を実施し,コヒーレンスの高いパルス電子線であることや,位相情報の時間分解測定が本装置で可能であることを確かめた.

キーワード:パルス,スピン,フォトカソード,透過電子顕微鏡,コヒーレンス

本文PDF