顕微鏡 第50巻▶第3号 2015
■日本における超高速電子顕微鏡開発の現状

高強度フェムト秒レーザー生成・加速電子線源を用いた超高速電子線回折と偏向法

阪部周二a,b,橋田昌樹a,b,時田茂樹a,b,井上峻介a,b,寺本研介a,b,渡邉浩太a,b

京都大学化学研究所
京都大学大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻

要旨:高度電子顕微鏡への次なる挑戦の一つが高い時間分解能を持つ高速電子顕微鏡の開発である.その端緒として超高速電子線回折の研究が進められている.電子線回折により超高速の非可逆過程の現象を捉えるには,高強度の短パルス電子線源の開発が必須となるが,空間電荷効果による電子パルスの広がりという本質的な問題がある.筆者らは高強度短パルスレーザー生成・加速電子を用いた超高速電子線回折法の開発を目指して,レーザーと固体との相互作用による電子生成・加速に関する研究を行っている.本法では高強度短パルスレーザーにより標的中で電子生成(プラズマ化)と電子加速が瞬時に起こり,高密度の短パルス電子源として期待される.本論文では,レーザー電子加速の原理の概略,この電子源からのパルスの静磁場を用いた圧縮,単一パルスによる電子線回折パターン撮像の実証,さらに,短パルス電子線偏向法を用いた表面波の観察について概説する.

キーワード:超高速電子線回折,高強度フェムト秒レーザー,レーザー加速,電子偏向法

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