顕微鏡 第51巻▶第1号 2016
■解説

インフルエンザウイルスのゲノムパッケージング機構

野田岳志

京都大学ウイルス研究所 感染症モデル研究センター ウイルス微細構造研究領域

要旨:インフルエンザウイルスは,8分節の一本鎖マイナス鎖RNAをゲノムとして持つ.感染の後期,感染細胞表面から子孫ウイルス粒子が細胞外へと放出されるが,これらの子孫ウイルス粒子が感染能を獲得するためには,8分節すべてのゲノムRNA分節をもれなくウイルス粒子内に取り込む必要がある.しかし,分節化されたゲノムがどのように取り込まれるかという「ゲノムパッケージング機構」は半世紀以上も謎であり,ウイルス学の古典的命題となっていた.我々はゲノムパッケージング機構の分子機構を明らかにするため,電子顕微鏡法ならびに分子生物学的手法により,ウイルス粒子に取り込まれたゲノムRNA分節の解析を行ってきた.本稿では,近年我々が明らかにしてきたゲノムパッケージング機構について解説する.

キーワード:インフルエンザウイルス,ゲノムパッケージング,透過型電子顕微鏡法

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