顕微鏡 第51巻▶第1号 2016
■講座

ボルタ位相差クライオ透過電子顕微鏡

福田善之,Radostin Danev,Wolfgang Baumeister

Department of Molecular Structural Biology, Max Planck Institute of Biochemistry

要旨:クライオ透過電子顕微鏡法は,従来の重金属を用いた染色試料の観察に比べ,試料を無染色のまま生理的な条件で凍結するので試料本来の電子密度の観察が可能である.しかしながら,これまでのクライオ透過電子顕微鏡による観察像のコントラストは低いという問題がある.この問題の解決の為,ゼルニケ位相差法が開発され,コントラストを改善することができたが,一方でフリンジの発生などが欠点として指摘されている.近年,透過電子顕微鏡用の新たな位相差法として,ボルタ位相差法が開発された.ゼルニケ位相差法とは異なり,ボルタ位相差法は観察像においてコントラストの改善に伴うフリンジが発生しない.本稿では,このボルタ位相差法について概説する.

キーワード:ボルタ位相板,位相差コントラスト,クライオ透過電子顕微鏡,電子線クライオトモグラフィー

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