顕微鏡 第51巻▶第3号 2016
■特集:植物形態研究の最前線

多細胞藻類における一次細胞間連絡の形成

長里千香子,寺内真,本村泰三

北海道大学北方生物圏フィールド科学センター
神戸大学先端融合研究環

要旨:褐藻類はコンブやワカメなどを含むグループであり,沿岸域において最も大型化する光合成生物である.全ての種が多細胞体制をとり,単列糸状,多列糸状,細胞や組織の分化が見られる複雑な多細胞体をとるものがある.隣接細胞間には原形質連絡と呼ばれる10–20 nmの小さな細胞質トンネル,細胞間連絡が存在している.同じく原形質連絡を有する陸上植物では,細胞質分裂時に形成されることが知られている.褐藻類では細胞質分裂および原形質連絡の出現時期が不明だったことから,電子線トモグラフィー解析を含めた微細構造観察を行った.その結果,中心体から伸びる微小管が交差する領域が細胞質分裂面となり,その予定域にゴルジ小胞と平板小嚢と呼んでいる扁平な膜構造が出現し,それらが融合することで隔壁が細胞膜内部より遠心的に発達し,親細胞壁に到達することが示された.また,原形質連絡は細胞質分裂時に形成されることが確認された.

キーワード:褐藻類,原形質連絡,細胞質分裂,細胞分化,多細胞

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