顕微鏡 第51巻▶第3号 2016
■特集:植物形態研究の最前線

電子線トモグラフィー法を使った植物のアクチン-微小管相互作用の解析

竹内美由紀,峰雪芳宣

東京大学大学院農学生命科学研究科
兵庫県立大学大学院生命理学研究科

要旨:電子線トモグラフィー法は,試料を連続的に傾斜させて透過形電子顕微鏡で撮影を行い,得られた二次元の傾斜画像シリーズから三次元像を再構築する方法である.細胞内微細構造の三次元観察や定量的解析に利用されており,本稿では,細い繊維状の構造物であるアクチン繊維と微小管の細胞内分布やその相互作用の解析に応用した例を紹介する.分裂準備帯は高等植物体細胞分裂のG2期から前期に細胞表層に観察される,微小管が帯状に並んだ構造である.この分裂準備帯の微小管の配向制御にはアクチンが関与していると考えられているが,その機構はわかっていない.アクチンと微小管の相互作用を明らかにする上では,その細胞内での微細構造や配置は重要な情報である.電子線トモグラフィー法を用いた解析により,分裂準備帯の微小管やマイクロフィラメント一本一本を可視化し,これらの位置関係を調べることができた.

キーワード:アクチン-微小管相互作用,電子線トモグラフィー法,マイクロフィラメント,微小管,分裂準備帯

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