骨の老化と加齢性骨粗鬆症の形態学的解析
a産業医科大学医学部第1解剖学講座
b名古屋女子大学家政学部食物栄養学科
要旨:骨は常に破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成のダイナミックなバランスのもとに正常骨量が維持されている.加齢に伴い骨吸収が骨形成を上回り,骨量が減少し,骨粗鬆症を引き起こす.本解説では,ヒトおよび実験動物における骨の老化と加齢性骨粗鬆症における形態学的変化について,我々のこれまでの研究成果などを含めて紹介する.ヒト椎骨,大腿骨および脛骨における海綿骨と皮質骨の三次元微細構造の加齢変化を解析し,加齢性骨粗鬆症のモデルマウスとしてのSAMP6(senescence accelerated mouse prone 6)と正常マウスSAMR1との比較検討を行った.マウス椎骨,大腿骨と脛骨の骨密度と骨量の測定,骨を構成する諸細胞の構造解析および分子生物学的検討を行い,SAMP6マウスにおける低骨量の原因を考察し,転写因子PPARγ(peroxisome proliferator-activated receptor γ)の発現亢進とsFRP4(secreted frizzled-related protein 4)遺伝子の高発現は,SAMP6マウスにおける骨量減少に関与する可能性を示唆する.
キーワード:骨粗鬆症,SAMP6,骨リモデリング,マイクロCT,骨細胞