顕微鏡 第52巻▶第2号 2017
■解説

電子顕微鏡はまだまだ活躍できる

山元修

鳥取大学医学部感覚運動医学講座皮膚病態学分野

要旨:皮膚科学分野における電子顕微鏡を用いた研究は1960~70年代にかけて米国のKen Hashimotoらを中心に盛んに行われたが,現在では皮膚科の形態学的研究は免疫組織化学の興隆によりそれにとって代わられた感がある.残念ながら,皮膚科学分野では電子顕微鏡が昔のような勢いを取り戻すことはないかもしれないが,その活躍の場を全く失ったかというと決してそうではない.本稿では電子顕微鏡には現在でも十分活躍できる場があることを,汗孔癌における細胞質内管腔構造,筋線維芽細胞や異型線維黄色腫におけるフィブロネクサス接着装置,脂腺癌における脂質滴,偽血管性有棘細胞癌におけるトノフィラメント,Fabry病における封入体,角化異常症,毛髪異常症を例にあげ,我々の行ってきた研究成果を中心に述べる.さらに,新たに加わった疾患の病態研究や新規開発物質のリスク評価にも応用の場が残っていることを述べる.

キーワード:電子顕微鏡,皮膚科学,診断皮膚病理学,病因論,リスク評価

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