顕微鏡 第52巻▶第3号 2017
■特集:最近の磁気イメージングの話題

磁気力顕微鏡

齊藤準

秋田大学大学院理工学研究科

要旨:磁場の勾配を検出する磁気力顕微鏡(MFM)は,数10 nm程度の空間分解能を有し,観察試料に特別な調整が不要であることから,磁性材料や磁気デバイスの研究開発の現場で磁区観察の汎用ツールとして広く用いられている.近年,空間分解能や機能性の向上が強く求められている.このため,筆者らは従来のMFMの性能を大幅に向上させた交番磁気力顕微鏡(A-MFM)を新たに開発した.A-MFMは非共振の交番磁気力が誘起する探針振動の周波数変調を利用する.A-MFMでは,1)試料表面近傍での磁場検出を実現することで,磁気記録ヘッドの交流磁場計測や高密度磁気記録媒体の直流磁場計測において,空間分解能5 nmを可能にし,2)磁場のベクトル計測,ストロボ計測を磁場の位相情報処理により可能にし,併せて試料磁極(N極,S極)の極性の直接検出を可能にした.本稿では,MFMにおける最近の進展について報告する.

キーワード:磁気力顕微鏡,磁場イメージング,磁気記録ヘッド,磁気記録媒体,永久磁石

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