顕微鏡 第43巻▶第2号 2008
■線維芽細胞をめぐる最新の知見

小腸絨毛上皮下線維芽細胞における細胞間シグナリング

古家園子a,古家喜四夫b

a生理学研究所・脳機能計測センター・形態情報解析室
b科学技術振興機構・細胞力覚プロジェクト

要旨:消化管の上皮細胞の基底膜下にはアクチンに富んだ線維芽細胞がギャップ結合を介して細胞性網状構造を構築し,間質を包んでいる.この細胞は,1)エンドセリン,サブスタンス-P,ATPなどに対する受容体を持ち,2)cAMP依存的に可逆的に形態変化し,3)機械的刺激感受性があり,ATP放出を介して細胞間Ca2+波を伝播させるなどの細胞外ATP情報伝達系を持ち,4)その機械刺激感受性は細胞の形態に依存して大きく変わる,等々の特徴的な性質を持つ.放出したATPがATP受容体を持つ隣接した神経細胞を活性化するなど,上皮下線維芽細胞は神経網,血管網,上皮細胞,平滑筋,そして免疫系細胞とも相互作用し,絨毛における細胞間シグナル伝達系の要として機能している.

キーワード:小腸,絨毛上皮下線維芽細胞,Ca2+シグナリング,ATP受容体,ギャップ結合

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