顕微鏡 第43巻▶第2号 2008
■線維芽細胞をめぐる最新の知見

がん組織を構成する線維芽細胞の起源

石井源一郎,落合淳志

国立がんセンター東病院臨床開発センター臨床腫瘍病理部

要旨:ヒトがん組織は,がん細胞とそれらを取り囲む多種類の間質細胞(線維芽細胞,血管構成細胞,免疫担当細胞)から構成される.線維芽細胞は,がん間質形成過程において動員される主な細胞であり,線維芽細胞の増生所見はがん組織において見られる一般的な現象である(desmoplastic reaction).また,がん間質に動員された線維芽細胞の性状はがんの悪性度と相関することが示されている.そのため,がんの悪性像を理解するには,がん細胞のみならず線維芽細胞の生物像をも把握することが重要であると考える.本稿では,がん組織形成過程における線維芽細胞の起源・動員機構に焦点を当て概説する.

キーワード:線維芽細胞,がん組織,がん間質,骨髄細胞

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