顕微鏡 第44巻▶第1号 2009
■講座

電子顕微鏡データの定量解析

石塚和夫

a有限会社HREM(HREM Research Inc)

要旨:電子顕微鏡は目に見えないものを拡大して,微細構造を観測者の眼前にあらわ(顕)にするものである.このために,観察方法の工夫や,装置の改良による取得データの改善に力が注がれてきた.一方,データ処理により元の画像を肉眼で見るだけでは判らない情報を得ることが可能である.データ処理は本来存在しない情報を生成してはならない.この意味において,データ処理はなんら新しい情報を生み出すことはない.しかし,有用なデータ処理は,データに含まれている情報を人間が認識しやすいように加工しているのである.本稿では,このような画像処理の幾つかについて解説したい.しかし,これらの処理はもろ刃の剣であり,その解釈には観察対象に関する深い知識が必要とされる.このことを頭の片隅において,聡明な読者諸氏にはこのようなデータ処理に果敢に挑んで頂きたい.

キーワード:ウィナーフィルタ,デコンボルーション,最大エントロピー法,Richardson-Lucy法,格子歪み解析

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