顕微鏡 第44巻▶第2号 2009
■講座

哺乳類精子鞭毛の機能分子形態学

飯田弘,栗尾仁之,金子たかね

a九州大学大学院農学研究院動物学分野

要旨:精子はゲノムと卵活性化因子の運搬に特化した細胞であり,精子の運動,即ち鞭毛運動の分子基盤を理解することは精子を理解するために重要である.哺乳類精子鞭毛には軸糸に加え,それを取り囲む軸糸周辺構造体がある.軸糸周辺構造体は外側緻密線維,衛星線維,線維鞘,ミトコンドリア鞘からなり,軸糸と有機的に結合して鞭毛を構築している.そのため,哺乳類精子の鞭毛は軸糸のみから構成される下等動物の鞭毛よりも構造的に複雑である.これらを構成する分子の同定や機能解析により,少しずつ精子の構造や鞭毛運動の仕組みが解明されつつある.我々が最近研究対象としてきた分子を中心に,精子鞭毛内オルガネラの構造と機能について概説する.

キーワード:精子鞭毛,外側緻密線維,衛星線維,線維鞘,ミトコンドリア鞘

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