顕微鏡 第45巻▶第1号 2010
■解説

生体分子の動的プロセスを直接可視化する高速AFM

安藤敏夫

金沢大学理工研究域数物科学系

要旨:タンパク質の機能メカニズムの解明に向けて,個々のタンパク質分子の動的プロセスを高い空間時間分解能で直接可視化できる高速AFMを開発した.AFMに含まれるすべてのデバイスを高速化し,スキャナーの振動抑制技術や探針・試料間接触力の低減化技術を開発した.条件にもよるが,1画像を40~70msの時間で撮ることが可能となった.しかも,デリケートなタンパク質間相互作用を乱さずにイメージングできる.この新規顕微鏡によりタンパク質の機能中のダイナミックな振る舞いを直接映像として捉えることに成功し,且つ,その映像データからタンパク質の機能メカニズムを解明できることを実証した.本稿では,高速AFM開発の動機をまず述べ,装置開発の概略,得られた映像,今後の展望について解説する.

キーワード:原子間力顕微鏡,イメージング,タンパク質,動的プロセス,可視化

本文PDF