顕微鏡 第45巻▶第2号 2010
■オートファジー;形態学と分子生物学の融合

Atg5非依存性オートファジーの形態学と分子生物学

清水重臣,荒川聡子,西田友哉

東京医科歯科大学・難治疾患研究所・病態細胞生物

要旨:オートファジーは細胞内小器官などの自己構成成分を分解するシステムで,細胞の健全性の維持に貢献している.また,その機能異常は神経疾患や発癌など様々な疾患に関与することが報告されている.従来オートファジーの実行メカニズムは,酵母菌から哺乳動物まで保存されている複数の分子群Atg5, Atg7, LC3等によって完全に支配されていると考えられてきた.しかしながら,私たちは,Atg5, Atg7, LC3などの分子に依存しない新たなオートファジー機構が存在することを発見した.この新規オートファジーは,ゴルジ装置やエンドソームを起源としており,Rab9等の分子によって調節されている.また,細胞にDNA傷害などのストレスが加わった時に強く誘導される他,赤血球が成熟する際に起るミトコンドリア除去にも関与している.

キーワード:オルタナティブオートファジー,ゴルジ装置,LC3,Rab9

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