顕微鏡 第45巻▶第3号 2010
■特集:電子線ホログラフィーで究める物質科学

マンガン酸化物の磁気相転移と微細構造
―電子線ホログラフィーとローレンツ顕微鏡法を用いた直接観察―

村上恭和a,b,葛西裕人b,c,金中正b,d,馬見新秀一b,e,進藤大輔a,b,森茂生,外村彰b,c,g

東北大学多元物質科学研究所
沖縄科学技術研究基盤整備機構
日立製作所基礎研究所
三星電子
日立ハイテクノロジーズ那珂事業所
大阪府立大学工学研究科
理化学研究所単量子操作研究グループ

要旨:ペロブスカイト型構造を持つLa0.25Pr0.375Ca0.375MnO3は巨大磁気抵抗効果(CMR効果:磁場による電気抵抗の著しい減少)を示す典型的な物質である.CMR効果はキュリー温度の近傍で最も顕著になるという性質があり,磁気微細構造とマクロな伝導性との関わりに関心が寄せられている.本研究では電子線ホログラフィーとローレンツ顕微鏡法を駆使して,液体窒素温度以下の低温域で起こる磁気相転移のプロセス(核生成・成長のメカニズム)と,それによって生じる磁気微細構造の特徴・性質を調べた.さらに電子顕微鏡の観察結果のみを使って,結晶磁気異方性定数などの主要な磁気定数を求めた結果を報告する.

キーワード:電子線ホログラフィー,ローレンツ顕微鏡法,巨大磁気抵抗,磁区構造,磁壁

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