顕微鏡 第45巻▶第4号 2010
■特集:微生物をめぐる最近の知見

黄色ブドウ球菌γヘモリジンが形成するヘテロヘプタマー膜孔複合体の立体構造予測と分子配置解析

冨田典子,安西眸,阿部和代,太田信

東北大学流体科学研究所
東北大学大学院工学研究科

要旨:黄色ブドウ球菌γヘモリジンは34 kDaのHlg1成分と32 kDaのHlg2成分から成る2成分性溶血毒素である.筆者らは,2成分が血球上で3:4または4:3の割合で交互に並んで集合し,リング状のヘテロヘプタマー膜孔複合体を形成することを明らかとしてきた.本研究では,未だ明らかとされていないγヘモリジン膜孔複合体の立体構造を再構築することを目的とし,高精細電子顕微鏡像を基に,ヘテロ7量体非対称性構造に特徴的な分子配置を解析し,正7角形からのずれを伴った立体構造の予測をおこなった.電顕像からサブユニットの形状および大きさを計測し,3次元構造を設計した.膜孔は上部が円柱構造,下部は分子が内側に折れ曲がり底部に小孔が付随した漏斗状構造をしていると予測された.さらに,対角線法および画像解析により,ある隣接サブユニット間が正7角形から約15°離れる方向にずれて配置されていることが明らかとなった.

キーワード:黄色ブドウ球菌γヘモリジン,ヘテロヘプタマー膜孔複合体,高精細ネガテイブ電子顕微鏡像,3次元構造,分子配置解析

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