顕微鏡 第45巻▶第4号 2010
■解説

新生児期・乳飲期・離乳期における腸の吸収機構

藤田守a,b,馬場良子,熊谷奈々

中村学園大学
中村学園大学大学院栄養科学研究科
産業医科大学医学部第2解剖学

要旨:消化管,特に腸粘膜上皮の吸収上皮細胞は栄養素の消化と吸収に関して重要な役割を演じているが,哺乳動物においては,出生と離乳というタイミングで消化管の構造と消化吸収機構がダイナミックな変化を遂げる.乳飲期の腸吸収上皮細胞は成熟期とは異なり,部位によって機能的だけでなく,形態的にも分化しており,通常,離乳後には存在しない頂部細胞膜ドメインからの高分子物質の吸収機構(エンドサイトーシス)とそれらに関与するエンドゾームのネットワークが発達する.それらは電子顕微鏡や生物試料作製法の進歩によって初めて観察が可能となった構造であり,最近では多様な手法を用いたアプローチも可能となってきた.本稿では,出生直後から離乳に至る過程で生じる腸の形態および消化吸収機構の変化,特に吸収上皮細胞のエンドサイトーシスとそれに関与するエンドゾームのネットワークの変化について,我々のこれまでの成果も含めて概説する.

キーワード:腸,吸収上皮細胞,エンドサイトーシス,トランスサイトーシス,エンドゾームネットワーク

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