顕微鏡 第45巻▶第4号 2010
■講座

原子間力顕微鏡を用いた固液界面の原子スケール観察

福間剛士

金沢大学フロンティアサイエンス機構

要旨:原子間力顕微鏡(AFM)は,液中動作が可能であるため固液界面でのナノスケール構造観察へと従来から用いられてきた.しかしながら,原子スケールの構造・物性観察や原子操作を実現している超高真空AFMに比べ,液中AFMの性能は大きく劣っていた.超高真空中における原子分解能観察は,周波数変調AFM(FM-AFM)と呼ばれる動作モードを用いることにより実現していたが,これを液中で動作させることは非常に困難であると予想されていた.ところが,2005年に,これを実現する技術が開発され,FM-AFMによる液中原子分解能観察が実現すると,液中AFM技術は急速な進展を遂げ,生体分子や水和層などの,従来観察できなかった対象の原子・分子スケール観察を実現してきた.本稿では,液中FM-AFM技術の基本原理を解説し,その最近の応用事例を紹介する.

キーワード:周波数変調原子間力顕微鏡,水和現象,原子分解能観察,脂質膜,マイカ

本文PDF