顕微鏡 第45巻▶第4号 2010
■最近の研究と技術

極低温ローレンツ電顕法によるスキルミオン格子の可視化

于秀珍,小野瀬佳文a,b,金澤直也,永長直人b,c,十倉好紀a,b,c,松井良夫

独立行政法人科学技術振興機構・ERATO・十倉マルチフェロイックスプロジェクト
東京大学大学院工学系研究科
独立行政法人理化学研究所基幹研究所
独立行政法人物質材料研究機構

要旨:スキルミオン(Skyrmion)と呼ばれる渦状のスピン状態は,1960年代に素粒子物理学者(Skyrme)により予言されていた.物質中にスキルミオンが存在すると,特異な電磁気効果を誘起することが期待されているが,その生成過程および基本構造ははっきり分かっていない.そこで今回我々は,非中心対称性のB20型立方晶構造を持つらせん型磁性体Fe0.5Co0.5Siに着目し,電子顕微鏡の磁界型レンズの垂直磁場を巧みに制御することにより,らせん型スピン構造を,渦状スキルミオン構造に変化させ,更にこれをローレンツ電子顕微鏡像として可視化することに世界で初めて成功した.

キーワード:ローレンツ電顕法,強度輸送方程式法,スキルミオン格子

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