顕微鏡 第46巻▶第1号 2011
■学会賞(瀬藤賞)受賞論文

SiC表面分解によるナノチューブ・グラフェンの創製と構造制御

楠美智子

名古屋大学・エコトピア科学研究所

要旨:SiC基板由来のカーボンナノチューブ(CNT)とグラフェンについてTEMによる詳細な観察を行った.まず,SiC表面分解により高配向・高密度CNTがSiC(0001)上に形成されることを初めて見出し,CNTの直径と層数の相関関係よりその成長メカニズムを明らかにした.また,電子線回折法によりこの手法によりジグザグ型CNTが選択的に形成されることを明らかにした.続いて,SiC(0001)面上に形成されるグラフェンの界面構造を高分解能TEM観察と第一原理計算により調べた.その結果,SiCバイレイヤーが1層のみ分解した遷移的構造と3層が分解して出来たグラフェン層の二種類の界面構造が存在することを明らかにし,電子状態密度の計算結果より,それぞれの構造が金属的と半導体的であることをを示した.また,高分解能TEM観察により,SiC上グラフェンのステップにおける核形成と成長に関する生成メカニズムを示し,今後の均一グラフェンの大面積化に向けた足掛かりを提示することが出来た.

キーワード:カーボン・ナノチューブ,グラフェン,SiC,界面構造,TEM

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