顕微鏡 第46巻▶第2号 2011
■がん幹細胞の動態とその制御

がん幹細胞を標的とした免疫療法

道振義貴a,b,廣橋良彦a,平塚博義b,佐藤昇志a

a札幌医科大学・医学部・第一病理
b札幌医科大学・医学部・口腔外科

要旨:がん幹細胞は,(1)高い造腫瘍能を有し,(2)自己複製能を有し,(3)多分化能を有する細胞群と定義される(図1).これらの幹細胞様性質を有するため,わずかな個数でもがん幹細胞を免疫不全動物に移植すると新たにがんを形成することができる.また,がん幹細胞は化学療法や放射線療法といった現在の主ながんの治療法に対して抵抗性を示すことが知られている.このことから,がんの遠隔転移や治療後の再発といった臨床上患者の予後を直接左右するイベントにがん幹細胞は深く関わっていると考えられる.近年,がんに対する免疫療法は外科的療法,化学療法,放射線療法に次ぐ第4の治療法として注目されつつある.本稿では,化学療法や放射線療法に対して治療抵抗性を示すがん幹細胞に対して,免疫療法が有効であるか,また,そのような治療が現実的に可能になるか今後の展望も含め考察する.

キーワード:がん幹細胞,免疫療法,がん抗原

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