顕微鏡 第46巻▶第2号 2011
■解説

新規生理活性物質キスペプチンKisspeptinと性機能調節神経系
~新しい間脳(視床下部)―下垂体―性腺系機能概念の構築~

小澤一史,託見健,澤井信彦,岩田衣世,中根亮,飯島典生

日本医科大学大学院医学研究科生体制御形態科学分野

要旨:新規に発見された生理活性ペプチドである“キスペプチンkisspeptin”とその受容体であるKiss1r(またはGPR54)は,生殖機能を考える上で極めて重要な因子である.キスペプチンあるいはその受容体遺伝子の変異により,深刻な低ゴナドトロピン性性腺低形成症が誘発されることが報告されている.キスペプチンは視床下部の領域に発現し,性機能調節に関わる重要な神経であるGnRHニューロンに直接線維投射をし,GnRH分泌を制御すると考えられる.キスペプチンニューロンには明確な性差があり,性ステロイドホルモンによるフィードバック制御と深く関連している.また,キスペプチンニューロンの一部はdydorphinやneurokinin Bといった別の神経ペプチドと共存するものもある.キスペプチンは,GnRHニューロン活性の誘発因子として,性機能調節,特に思春期誘発にも深い関連性を有し,重要な働きを示す.本稿においては,キスペプチンニューロンの形態科学的特徴,機能的な特徴について解説し,新しい性機能調節軸の構築について提言する.

キーワード:キスペプチン,キスペプチン受容体,性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH),思春期,生殖制御

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