顕微鏡 第47巻▶第2号 2012
■特集:体内時計のかたち

体内時計を用いた理想的な食生活作りのために

平尾彰子,柴田重信

早稲田大学先進理工学部生理・薬理研究室

要旨:我々の体内に存在する体内時計は約24時間の周期で毎日時を刻んでおり,体内時計は疾病の発症リズムや投薬治療に影響を与える.体内時計と薬の関係を調べる時間薬理学と同様に,体内時計と栄養・食の関係を調べる“時間栄養学”の重要性について解説した.栄養物の吸収・消化・代謝に関わる酵素のほとんどは体内時計の支配下にあるので,食事のタイミングで肥満が予防できうる.一方,規則正しい食餌のタイミングがマウスの時遺伝子発現リズムをリセットできた.食事の間隔では長い絶食後の給餌でインスリン上昇に伴って体内時計の食餌性のリセットが起こることを見出した.また,食事内容では消化しやすいデンプンの重要性を見出した.現代人の抱える病気の多くが,食事療法を必要としているのが現状であるため,我々はより,臨床応用が可能なモデルマウス作りを目指している.体内時計にやさしい食事パターンが健康維持,改善に役立つと考えている.

キーワード:時間栄養学,体内時計,時計遺伝子,生活リズム,メタボリックシンドローム

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