顕微鏡 第47巻▶第2号 2012
■解説

心血管イベントの発生における血栓形成機序の病理形態

浅田祐士郎

宮崎大学病理学講座構造機能病態学分野

要旨:虚血性心疾患や脳梗塞などの心血管イベントは,動脈硬化性プラークの破綻に伴う血栓形成により発症することから,アテローム血栓症と総称される.血栓は血小板と血液凝固反応の最終産物であるフィブリンより成るが,これらの度合いは一様ではなく,血管径や壁の性状,血流や血液凝固能などにより異なっている.動脈の血栓形成では血小板が主役を演じるが,プラーク内には血液凝固系のトリガーである組織因子が発現しているため,凝固系も活性化され,血小板とフィブリンから成る白色血栓が形成される.プラークは,脂質成分や炎症細胞に富んだプラークから,これらに乏しい線維性プラークまで,その病理像は多様である.前者では強い凝固活性を有しており,プラーク破綻に伴い,よりフィブリンが優位なサイズの大きい血栓が形成されやすい.一方,プラーク破綻は無症候性のものが多く,心血管イベントの発症には血栓の成長・増大も要因となる.

キーワード:アテローム血栓症,血小板,組織因子,フィブリン

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