顕微鏡 第47巻▶第4号 2012
■解説

次世代1分子可視化技術で明らかになるタンパク質翻訳の仕組み

上村想太郎

スタンフォード大学医学部構造生物学科
現所属:理化学研究所オミックス基盤研究領域

要旨:近年開発されたZero-Mode Waveguides法と呼ばれる次世代1分子蛍光イメージング技術は従来の全反射型1分子蛍光イメージング法の問題点を克服した.我々はその技術を応用し,tRNA(転移RNA)を蛍光標識することによってタンパク質翻訳系を1分子レベルで再現させ,その結果タンパク質翻訳過程を世界で初めて可視化することに成功した.さらにそのデータを解析することによって従来まで明らかにされてこなかったtRNAのリボソームへの結合・解離のタイミングを解明することができた.また,tRNAの蛍光標識の代わりに翻訳開始因子などを蛍光標識すると翻訳開始過程における翻訳因子の会合の様子を可視化することもできた.これらの結果が示しているように次世代1分子蛍光イメージング手法はあらゆる複雑な分子メカニズムを解明するのに最も適している.

キーワード:タンパク質翻訳,1分子計測,ゼロモード導波路,翻訳初期,リボソーム

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