顕微鏡 第48巻▶第1号 2013
■スピン偏極電子技術

スピン偏極走査電子顕微鏡(スピンSEM)

孝橋照生

(株)日立製作所中央研究所

要旨:スピン偏極電子技術を発展させてきた重要な要素のひとつが,スピン検出器の開発である.その検出技術を走査電子顕微鏡に取り入れ2次電子のスピン偏極度を解析し,磁区観察を可能にした装置がスピン偏極走査電子顕微鏡(スピンSEM)である.この技術は開発されて30年近く経つが,現在でもその性能向上は続いており,他の磁区観察顕微鏡にはない特長を活かし,磁性体の基礎的な物性解明を目的とした学術的な研究のみならず,磁気記録デバイスや永久磁石材料等の評価,解析にも用いられている.本稿ではスピンSEMの原理,特に最大の特徴であるスピン偏極度検出に関して述べた後,スピンSEMを用いたHDD記録媒体観察,並びに最近我々が搭載した試料加熱機構を用いたCo単結晶の500°Cまでの磁区観察例を紹介する.

キーワード:磁区,スピンSEM,スピン偏極,試料加熱機構

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