顕微鏡 第48巻▶第1号 2013
■解説

病理組織診断における免疫染色

伊藤智雄

神戸大学医学研究科病理学講座病理診断学分野・同医学部附属病院病理診断科

要旨:免疫染色は現代の病理診断学にとってなくてはならない.様々な目的の抗体があり,上皮性マーカーとしてはサイトケラチン類,その他目的によって様々なものが用いられる.血球マーカーは主に悪性リンパ腫の診断に用いられ,L26,CD3を中心として多様な抗体が用いられている.間葉系マーカーとしては,平滑筋にはαSMAその他が用いられるが,単独での判断は控えるべきである.横紋筋肉腫にはmyogeninやMyoD1といった新たな有用なマーカーが登場した.悪性黒色腫に対してもSOX10という優秀な新規抗体が得られ,今後の普及が待たれる.治療選択に有用な免疫染色としては特に乳癌におけるエストロゲン,プロゲステロン受容体,さらにHER2が広く検索されている.近年肺腺癌の一部にEML4-ALK融合遺伝子陽性群が見出され,分子標的療法の適応決定に免疫染色が用いられるようになった.今後とも新たな抗体の登場などにより,より免疫染色の重要性は高まってゆくものと思われる.

キーワード:免疫組織化学,免疫染色,抗体,病理診断

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