顕微鏡 第49巻▶第1号 2014
■大気圧走査電子顕微鏡(ASEM)

大気圧走査電子顕微鏡を用いたシナプス構造と分子局在の解析

植村健

信州大学医学部分子細胞生理学講座

要旨:シナプス形成は複雑かつ精巧な脳神経ネットワーク構築の要のステップの一つである.近年,小脳におけるGluRδ2-Cbln1-NRXN複合体などの脳シナプス形成を担うシナプスオーガナイザーの存在が明らかになってきたが,シナプスの形成過程,分子基盤については不明な点が多い.SiN薄膜窓を底面にもつASEMディッシュ上に初代培養神経細胞を培養し,光学顕微鏡と電子顕微鏡による同一視野観察が可能な大気圧走査電子顕微鏡(ASEM)を用いてシナプスに局在する分子の観察を試みた.さらに,シナプス形成を誘導するタンパク質をコートした磁気ビーズを培養神経細胞に添加することで,ASEMディッシュ上の任意の場所にシナプス前部の構造を作り観察できることが示された.初代神経細胞培養とASEMによる解析は,シナプス形成の分子機構を解明する上で有力なツールになるものと期待される.

キーワード:大気圧走査電子顕微鏡,シナプス形成,シナプスオーガナイザー,グルタミン酸受容体GluRd2

本文PDF