大気圧走査電子顕微鏡(ASEM)を用いた水溶液中における各種層状複水酸化物の膨潤・剥離挙動の直接観察
a金沢工業大学バイオ・化学部応用化学科
b日本電子(株)SM事業ユニット
要旨:カチオン性の水酸化物ナノシートから構成される層状複水酸化物(LDH)は,膨潤・剥離することにより,様々なナノ構造材料としての応用が期待されている.これまでLDHの膨潤や剥離挙動の評価は,主に乾燥後のLDHを用いて粉末X線回折装置,透過型電子顕微鏡及び原子間力顕微鏡で行っており,溶液中のLDHの直接観察は行われていない.これらの現象を溶液中で直接観察できれば,LDHの膨潤・剥離の容易な観察と,反応過程に関する新たな情報の取得が期待できる.本研究では,従来困難であった溶液中での高分解能の観察が可能な大気圧走査電子顕微鏡(ASEM)に着目し,LDHの膨潤・剥離挙動を純水,ラウリン酸ナトリウム溶液及びホルムアミド溶液中で直接観察することを試みた.その結果,LDHが純水及びラウリン酸ナトリウム溶液中で膨潤する様子やホルムアミド溶液中で瞬時に剥離する様子が観察され,ASEMが溶液中のLDHの膨潤・剥離挙動の観察に有用なことが明らかになった.
キーワード:層状複水酸化物,膨潤,剥離,ASEM,走査電子顕微鏡