クライオ電子顕微鏡による界面活性剤ミセルのナノ構造観察
a奈良女子大学研究院自然科学系化学領域
b京都大学化学研究所
要旨:界面活性剤が水溶液中で形成する会合体のナノ構造は,クライオ電子顕微鏡(cryo-TEM)によって観察することができる.本稿では,分子内に2本のフッ化炭素鎖を有するフッ化炭素系ジェミニ型,フッ化炭素と炭化水素の異種の疎水鎖を有するハイブリッドジェミニ型,3本のアルキル鎖を有するトリメリック型の3つのタイプの特異な構造をもつ界面活性剤について,cryo-TEMによる会合体のナノ構造を紹介する.これらの界面活性剤の会合体の構造はアルキル鎖長,連結鎖長および界面活性剤の濃度によって異なり,フッ化炭素系ジェミニ型界面活性剤では多角形ベシクル,フッ化炭素―炭化水素系ハイブリッドジェミニ型界面活性剤では600~800 nmの多重層ベシクルを形成するなど,従来型の界面活性剤では認められないユニークな会合体特性を示す.
キーワード:クライオ電子顕微鏡,cryo-TEM,界面活性剤,ミセル,ベシクル